学習性無気力という言葉をご存じでしょうか?
詳しくは知らなくてもその言葉を聞いたことはある方もいらっしゃると思います。
Wikipediaを参照すると学習性無気力とは「長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれた人や動物は、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなるという現象」1です。
電気ショックを受けても逃げない犬の実験は有名です。
今回の記事では「学習性無気力を回避するためにはどうすればいいか?」という話をしたいと思います。
まず学習性無気力はストレス回避不可能な環境に置かれた人が必ずなるわけではありません。個人差があります。
必ずなるのであれば全人類が無気力にうなだれているでしょう。
ではそうした個人差はどこから来るのか、この差を考える土台となるのがワイナーの原因帰属理論です。
この理論は私たちが体験した結果の原因を考えるときに、どこにその原因を求めやすいかを論じたものです。
自分の内側に求めるのか。それとも外側か
その原因は持続されるものか。それとも一時的か
この二つの視点から分類すると以下のように4つの組み合わせに分けられます。2
たとえば自分の内側に原因を求め、その原因は持続的と考えるスタイルの人は「自分の能力」に結果の原因を求めやすいタイプといえます。
逆に原因は自分の外側にあり、一時的なものであると考えるスタイルの人は「運」が結果の原因であると考えやすいタイプです。
あくまで傾向であり、たとえば隕石が落ちてきた原因を自分の能力が足りないからと考える人はいないでしょう。
さて、ではこの中で学習性無気力になりやすいのはどのタイプでしょうか。
もうピンと来ている方もいらっしゃると思いますが、それは「内的×持続的」の組み合わせです。
つまり自分の能力によって決まるという考え方です。
そして自分自身の能力について私たちは大きく変化しないものととらえがちです。3
ですから、自分の能力に原因を求めがちな人が仕事で失敗続きを経験すれば、「自分の能力が足りない → 能力はこれ以上変わらない → 無力感 → 学習性無気力」とつながっていきます。
この事態を回避するために必要なのは以下の2つでしょう。
視野を広げる
小さな成功を実感する
まず仕事を失敗したとき、それは全部自分の能力のせいでしょうか?先ほど隕石が落ちてきたことを自分のせいと思う人はいないと書きました。
では仕事の失敗はどうでしょう?たとえば隕石が仕事のPCを破壊したことによる失敗は自分のせいでしょうか?
何らかの結果が起きた時すべてが自分のせいではありません。
そこにはグラデーションがあるのです。外的な要因は多かれ少なかれ必ずあります。そうした視点も持っておくことが必要でしょう。
もちろん行き過ぎると全て他人のせいにしてしまうのでバランスが必要ですね。
次に小さな成功の実感です。
学習性無気力の実験では、ネズミに学習性無気力を起こすような体験をさせる前にできるという体験をさせておくと、学習性無気力になりにくいことが分かっています。4
できるようになったという経験が、学習性無気力を防ぎます。それは自分は変化できるという体験の成果です。
『世界は「日記」でできている』において人生は取り戻せると書きました。日記は過去の自分が変わっていくことを実感させます。そうした実感の積み重ねが自分は変わることを自分自身に納得させます。
小さな成功体験を積み重ねることが自分は変われるということを納得させます。
そして独学もそうでしょう。
昨日分からなかったことが今日少しわかった
去年は意味不明だった本が、今は少し物足りない
そんな感覚は厳しい世の中でふとした拍子に倒れてしまいそうな、そんな背中をそっと支えてくれるはずです。
学習性無気力を回避するためにはどうすればいいのかといった知識を理解したとしても、できるという実感を持つためにはその人自身の能動的な動きが必要になります。
独学同好会の目的のひとつ「それぞれの独学をエンカレッジする」の中に「それぞれ」という言葉が入る理由もそこにあります。
もしひとりでは心もとない時は、ぜひ独学同好会も活用してくださいね。
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関連書籍
今回の参考書籍
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%A6%E7%BF%92%E6%80%A7%E7%84%A1%E5%8A%9B%E6%84%9F
学習性無気力を考えるうえでさらに結果から得られたことを個別に当てはめるか、ほかのことにも広げて考えるかといった軸もあります
子供は自分の能力が原因であると考えても能力は伸びると考えているので、内的×持続的のタイプでも学習性無気力になりにくいようです。
免疫化条件と呼ばれる