今井むつみさんの『英語独習法』を読んでいます。
英語とありますが、学ぶこと全般について通じるものがあるので、独学に興味がある方にもおすすめです。
この本のポイントの一つが「スキーマ」という概念です。
本書の中から説明を端的に引用すると「無意識にコントロールされる自動的な注意システム」です。
自分で引用しておいて思いましたが、ちょっと難しいですね。
大雑把に意訳すると、私たちには無意識のうちに活用している知識や前提などが多く存在しています。
それはまさしく水面下の氷山のように大きいものですが、無意識のうちに活用されているので気づくことはできません。
たとえば日本語では未来は前、過去は後ろにあるとしています(未来を「見据え」、過去を「振り返ります」)。
これは日本語のスキーマです。しかし内モンゴルのトゥバ族が用いるトゥバ語は、過去が前に、未来は後ろにあるとしています。
もしトゥバ語ができるようになりたいのであれば、日本語のスキーマのままでは使えません。トゥバ語のスキーマを育てることが必要なのです。
英語でも同様です。日本語とは違う、英語のスキーマを育てることが重要なのです。
そして、育てるには知るだけでは足りません。
単純に英単語を暗記するだけでは英語スキーマは育たず、日本語スキーマを土台に英語を使うことになります。
ではどうすれば、英語のスキーマを育てることができるのでしょうか?
その方法のひとつとして紹介されているのが英作文です。たとえば英単語を一つ覚えたら英作文をしてみるといった手法も本書では紹介されています。
では、なぜ英作文がいいのか?
それはライティングなら吟味できるからです。
リアルタイムでどんどん進んでしまうスピーキングより、オフラインで注意を向け、吟味することができる、ライティングの練習をするべきだ。アウトプットの練習は必要だが、日本語スキーマの語彙や文法を適用していることに気づかないままで、いくら話す練習、書く練習を重ねても、英語スキーマは身につかないし、英語として自然な(通じる)アウトプットはできない。
—『英語独習法 (岩波新書)』今井 むつみ著 https://a.co/7MHpu4X
スピーキングはリアルタイムでどんどん進んでしまいます。しかし、ライティングなら吟味することができます。
そして、英単語を自分の文脈の中で使えた時、それは自分のネットワークにつながったといえるのでしょう。
ひとつの英単語が「自分の言葉」になった瞬間です。
では、なぜ英単語は自分の言葉になったのでしょう。わたしは、英作文という文章にする勉強法がポイントなのではないかと考えました。
この英単語を使って英作文をしたとき当たり前ですが文章の一部になっています。
そして、文章はなんらかの流れを持ちます。
文章は流れて、ほかのものとつながろうとします。つまり、自分のこれまで形成してきた文章にもぶつかり、つながり、流れを変えるのです。
これはアウトライナーが文章を書いて考えるツールであることとも関連しますね。
(関連記事:アウトライナーはアイディアを作るエネルギーを生む)
なにかあたらしいものを「自分の言葉」とするには、流れを作って、これまでの自分に、水面下の氷山にぶつけてやる必要があるのです。
そのエネルギーが新しい知識を自分に組み込むきっかけとなるのだろうと思います。
今月はちょうどいいので英語をテーマに何本か記事を書こうと思います。